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『坂道のアポロン』トークショー

2018-02-12 更新

三木孝浩監督、綾戸智恵

坂道のアポロンapollon

配給:東宝=アスミック・エース
2018年3月10日(土) 全国ロードショー
© 2018映画「坂道のアポロン」製作委員会
© 2008小玉ユキ/小学館

 第57回小学館漫画賞一般向け部門受賞、「このマンガがすごい!2009オンナ編」第1位に輝いた、名作コミック「坂道のアポロン」が、単独初主演となる知念侑李、共演に中川大志、小松菜奈を迎え、青春映画の名手として知られる三木孝浩監督(『ホットロード』 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』)がメガホンを取り映画化、2018年3月10日(土)に全国公開される。

 2月11日(日)には、東京・六本木で一般客向け試写会が行われ、上映後のトークショーにジャズシンガーの綾戸智恵と三木孝浩監督が登壇した。本作では、知念演じる主人公・西見 薫と中川演じる川渕千太郎が、ジャズ音楽に魅せられ見事なピアノとドラムのセッションを披露していることでも話題に。常にジャズ界の第一線を歩んできた綾戸は、そのセッション・シーンはもちろん、かけがえのない青春を描いた本作の高いドラマ性を大絶賛! 本作への溢れる思いを語りたいということから、この度三木監督とのトークショーが実現した。

 トークが始まるや否や、綾戸は「青春映画の中にジャズを使ってもらえるとは思わなかったので、むちゃくちゃ嬉しかった!」と興奮気味にコメント。三木監督は、「映画化にあたりジャズを勉強したけど、音楽の楽しい部分、特に初期衝動がストレートに伝わるジャンルだと思う」と、あらためてジャズの魅力を語った。劇中のシーンに話が及ぶと、綾戸は特にお気に入りのシーンとして、千太郎が幼少期に外国人バーの演奏者からドラムを教わる場面をピックアップ。綾戸自身がジャズに目覚めたのも、3歳の頃親に連れられて行ったジャズクラブがきっかけで、「ピアノを弾いているおっちゃんの横でまねをするのが楽しかったんです。(ジャズピアニストの)中村八大さんもいたかな。千太郎のシーンを見て、ジャズをやりだしたことを思い出した。私と一緒やな!」と感慨深げに語った。

apollon さらに綾戸は、本作がジャズを題材のひとつにしながら、ジャズ映画にとどまらないことに言及。「音楽が題材だけどジャズの映画じゃなくて、一番の着眼点は若者がいろいろな人、時間、事件と出会っていくこと。ようアンタみたいな若い監督にできたな! 素晴らしい映画です」として、綾戸節全開で三木監督の手腕を絶賛した。対する監督は、演技や演奏の面での俳優陣のがんばりを評価しつつ、「特に知念君と中川君は、“アドリブに見えるけど、実は音源に合わせてアドリブっぽく演奏する”というプロでも難しいことをやってくれている」と裏話を披露し、会場からは感嘆の声が。綾戸も、「彼らは演奏だけじゃなく、役柄の中でどうやってジャズと関わってきたかという人物を演じていた」と知念・中川のコンビを称賛しつつ、「彼らが太陽とお月さんで、そこにマドンナ(小松菜奈)がひとり……できすぎやないか!」と思わず褒めながらツッコみ、会場は爆笑の渦に包まれた。

 キャラクターの中では、特に中川演じる千太郎に共感したという綾戸。日本でジャズ音楽に携わるにあたり、有名アーティストから影響を受けることが当たり前のように考えられがちな中で、「きっと千太郎に聞いたら、憧れは有名人じゃなくて、バーのおっちゃんって言うんじゃないかな。そこが最高、きっかけが良くできている映画」としみじみとコメント。さまざまな悩みを抱えるなか、千太郎が唯一ひとりぼっちじゃないと確認できるのがジャズ・セッションをしている瞬間で、100万ドルの笑顔を見せてくれるところに魅力を感じたと語った。

 また、キャスト陣の迫力溢れる演奏シーンについて聞かれた綾戸は、「うまい!」とコメントしながらも、「演奏は私が評価するのではなく、お客さんが評価するもの。演奏するときは気にするのではなくて“捨てる”。そうするとお客さんが拾ってくれる」と独特の持論を展開した。これを受けて三木監督は、「ジャズでは演奏者自身も楽しんでいることが聞き手に伝わると、お客さんももっと楽しくなる。セッションの空気感をうらやましい、そこに入りたいと思わせることが大切だと思った」と振り返った。

apollon さらに綾戸は、ジャズシンガーを目指すにあたり自身の母から言われたという言葉を紹介。「母から、『ひとりで演奏するのは練習すれば誰にでもできる。でも、演奏を聴いた人が影響されて行動を起こすことによって、ひとりじゃないことを証明していくのが、自立している人間』と言われた。それを聞いて人前で演奏したい、自立したいと思えた」として、本作でも人と出会い関わりながら自分の道を作っていくキャラクターたちに、それが重なったことを明かした。続けて 「(普通は人に頼らない生き方を「自立」と呼びがちだが)人間、ひとりでいる瞬間というのは実はないと思う。自立していくというのは、人と関わっていくこと」と語り、これには三木監督や会場の観客も大いに感銘を受けた様子だった。

 また、本作の公開を待ちわびる若いファンの間では、この映画がきっかけでジャズに触れてみたくなったという声も、SNSを中心に多数あがっている。そのことについて綾戸は、「うれしい! 千太郎みたいに気にしないでいつでも入ってきてほしい」と笑顔に。さらに、特に千太郎を演じた中川については「哀愁のある役者さん。ジェームズ・ディーンを思い出した」とうとっとり。三木監督は「薫と千太郎の友情は、『スタンド・バイ・ミー』を参考にしていた。ふたりきりのときに泣くリバー・フェニックスの、あの感じができないかなとプロデューサーとも話していた」と意外な裏話を披露し、綾戸も「焼きもちを焼きたくなる男二人の関係、性を超えるものがある」とあらためてキャストたちの演技を絶賛した。

apollon そして、話題は本作の舞台、昭和時代の長崎県・佐世保について。三木監督は、本作の時代設定について「その時代が持っているエネルギーが大事。今の時代でやっても表現しづらいことがあるけど、昭和時代の佐世保は舞台としてすごく面白かった」とそのこだわりを明かした。綾戸は、劇中に登場する教会が、クリスチャンだけでなく広く街の人々の憩いの場になっている描写などを「よく描けていた」と感心しつつ、「今の時代もいつかは振り返る時が来る。移り行き消えていくことを嘆かずに、それが『あった』と伝えて良い作品を作ることが大切。この映画ではそれができているので、老若男女に見てほしい」と力強くコメントした。

 また、三木監督が二児の父であることを知った綾戸は、「子に対する気落ち、親に対する失念とか、いずれは旅立つということをうまく描いている。ヤケになるときはなったらいいし、(薫が千太郎に)“泣け!”と言うシーンも素晴らしかった」とあらためて人物描写を絶賛。

 トークの最後には、綾戸からこれから映画を観るファンにメッセージが送られた。「この映画はジャズだけじゃなくて青春が描かれていて、上り坂、下り坂、まさか!すべてのキャラクターが100%以上意味のある起用をされていて、すべてが人生観につながっている。皆さんにも起こりうることばかりです。素敵な映画なのでぜひともご家族で、そしてジャズを好きになるきっかけになってくれたら。ぜひご覧ください」そして三木監督は、「(映画を観たら)皆さんの感想もぜひお聞きしたい。この映画を愛していただけたらうれしいです」と笑顔で締めくくった。


(オフィシャル素材提供)



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