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『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』
オフィシャル・インタビュー
2017-09-09 更新
荒川泰次郎
© 『HER MOTHER』製作委員会
配給・宣伝：渋谷プロダクション
衣装協力：REPLAY
荒川泰次郎
熊本県出身。舞台、TV、映画と幅広く活動。
主な出演作に「かもしれない女優たち」「くノ一忍線帖」「コウの花嫁」など。
昨年10月に釜山国際映画祭ニューカレンツ部門に正式出品され、そのセレクションが評価されている大阪アジアン映画祭など国内外で絶賛されている佐藤慶紀監督の問題作『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』が、満を持して９／９(土)～10／６(金)まで新宿K's cinemaで公開される。
南カリフォルニア大学を卒業した新進気鋭の佐藤慶紀監督が、10年程前、加害者の死刑を止めようとする被害者遺族がいることを知り、復讐心も湧いてくるであろう中、そのような決断をした理由を深く考えたいと思い、制作した本作。
死刑囚・孝司を演じた荒川泰次郎のオフィシャル･インタビューが到着した。
この作品との出合いを教えてください。
知り合いのキャスティングディレクターからオーディション情報を頂き、受けました。スクランブル交差点で合格のご連絡を受け、その場でガッツポーズを決めました！
初めて脚本を読んだ時の感想は？
正直、すごく重い作品だと思いましたが、各々の愛を感じるとも思いました。読んだ瞬間、作品の要となる田中孝司に引き寄せられ、必ずオーディションで勝ち取りたいと思っていました。
この役を演じるにあたって、何か役作りはされましたか？
裁判所のシーンがあったので、イメージを深めるために、実際に裁判を傍聴しに行きました。被告人はどのように出てきてどんなことを考えているのか。法廷に立つ時は、どんな立ち方か？ 細かな仕草や、習慣的に見えるものを探しました。また、ご家族はその時にどういう状態で裁判を傍聴しているのか等を参考にさせていただきました。実際に映画の中で使わせていただいたものもあります。
また、田中孝司が普段生活している拘置所の中をイメージしようと思い、何本も映画を見たり、本を読み、たくさん映画を見ました。中でも、『休暇』や『デッドマン・ウォーキング』はすごく参考になりました。自分のことのように観ることが出来、部屋の中で動けなくなったこともありました。
この役の、どのような部分を大事に演じましたか？
本当は思いやりのある優しい人間というところです。ネタバレになってしまうので、あまり多くは語れませんが、何故こんなことをしてしまったのか？という部分はぜひ観ていただきたい部分です。
撮影前、撮影中、監督とはどのような話をされましたか？
監督は基本的に、役者を自由に演じさせてくれました。これはこうだからということを明確にはおっしゃらない分、本番が始まるまで恐かったです。衣装合わせの際に田中孝司のイメージはこういうことですよね？という意思疎通が取れた感触がありました。その瞬間、「ちゃんと自分を使おう。そこにいよう」、ただそれだけを心に決めました。
撮影中に１日で４キロ減量したとお聞きしました。どのようなタイミングで、どのように減量されたのですか？
基本的に私は順撮りだったので、殺人シーンや裁判シーンまで髪があり、面会シーンで坊主になります。その際、時間経過と共に田中孝司の気持ちの変化を表現したくて、１日で４キロ落としました。減量内容としては、とにかく着込んで走りました。５キロ歩いた後に、20キロ走り、夜ご飯はうどん１玉にしました。後はボクシングをしていたので、シャドウボクシングですかね。次の日が大事なシーンの撮影で、緊張や不安、楽しみであまり眠れなかったこともあり、目にクマまで出来て、よりリアリティを増せたかと思います(笑)。
本作で、減量以外にボクシングの経験が活かされた部分はありますか？
今もそれはいろいろな場面で感じます。芝居もボクシングに通ずるところがあるなと。やはり固くなっていては、相手の動きに対処することは出来ません。僕は昔、芝居が固いと言われたことがありました。今となっては、良く分かります。どれだけ緊張する場面にいたとしても、いかにリラックスすることが出来るのか、いかに自分でいられるのかはお芝居もボクシングと同じです。
また、グローブの上からですが、人を殴った経験や、殴られた経験があったのも大きかったと思います。痛さを知っているからこそ、自分の優しい部分に気づくことが出来たと思います。これは田中孝司の優しい人柄の部分や、過ちを犯してしまった後の、役作りにとても繋がりました。
ロケ地はどちらでしたか？ ロケ地の感想は？
現場はほとんどが吉祥寺周辺だったと思います。私は全てスタジオでの撮影だったのですが、やはりスタジオに入るだけで、スイッチが入りますね(笑)。
映画本編にはあまり映っていないのですが、殺害シーンで使った部屋は、部屋中血だらけにしたり、布団にベットリ血糊が付いていたりで、思わず痛い！と、言っちゃいました(笑)。
あと、小道具の手錠を掛けられると、気持ちが自然に入りました。セットや小道具はリアルに感じとれる大事な物だと思います。
被害者のお母さん役の西山 諒さんとの共演はいかがでしたか？
西山さんには本当に助けていただきました。お芝居中、とんでもないエネルギーと感情が伝わってくるんですね。やはり主役を張る方は違うなと思いました。面会シーンでは、西山さんと誰も入ることが出来ない世界を創り出すことが出来たと思いました。自分でも予期せぬところで感情が高まり、お互い涙を流してしまい、現場を静寂が包みました。誰も物音一つ立てることすら出来ない張り詰めた空間があり、監督がそのままカメラを回し始めました。とても緊張感のある張り詰めたシーンになったのではないかと思います。それも西山さんという大きな存在があったからだと思います。
僕も西山さんのように素敵な座長となり、相手役の方をリードできるようになりたいと思います。またいつか必ず共演したいです。次はどんな化学反応が起こるのか楽しみです。
お母さん役の箱木宏美さんとも貴重なエピソードがあるとお聞きしました。どのような出来事があったのですか？
箱木さんは、僕に対し、本当の息子のように接してくれました。大事な撮影の前には、メールでお母さんの心境をお伝えくださいました。
裁判所のシーンでは、箱木さんが坊主になった僕の姿を見て、急に泣き出してしまい、自分がしてしまったことへの罪の気持ちと責任を感じた瞬間でもありした。
劇中に、子供の頃はいつも頬を寄せ合っていましたという台詞があります。実際に現場で同じようにさせてもらった感触は今も忘れられません。
箱木さんはフランスのウズール国際アジア映画祭で、スペシャルメンションを受賞されました。そんな方々と肩を並べることが出来、本当に光栄です。
釜山国際映画祭での観客の反応はいかがでしたか？
予想以上に反応が良かったです。日本の死刑制度や文化について疑問もあると思いますし、理解できない部分もあると思います。しかし、その中で作品を評価していただけたことは、自信に繋がりました。
やはり愛というものは、どの国も共通したものがあるという認識を持つことができました。
これからご覧になる皆様にメッセージをお願いします。
今回、このインタビューを読んでいただきありがとうございます。この映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』は、被害者遺族の思い、また加害者親族の思い等、それぞれの感情をリアルに描いた作品になっています。
映画のビジュアルにもある「あなたは赦しますか？」という言葉通り、一人ひとり考え方や捉え方があると思います。
この映画を沢山の方々にご覧頂き、感じたものを大切な方々と少しでも共有して頂ければと思います。ありがとうございました。
（オフィシャル素材提供）
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