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『ローサは密告された』白熱トークイベント

2017-08-27 更新

柳下毅一郎(映画評論家)、高橋ヨシキ(デザイナー&映画ライター)

ローサは密告されたrosa

配給:ビターズ・エンド
シアター・イメージフォーラムほか大ヒット上映中!
© Sari-Sari Store 2016

 第69回カンヌ国際映画祭でフィリピン映画界に三大映画祭で初めての主演女優賞をもたらした『ローサは密告された』が絶賛公開中だ。8/12より上映が始まった関西では満席の回が出るなど、この「ヤバさ」を目撃したい映画ファンが劇場に殺到! フィリピンの麻薬撲滅戦争の裏側を見るかのような本作に、公開後には、「ものすごくリアル」「スクリーンの向こうで街自体が息づいているかのよう」「フィリピン警察のやらかし具合は酷いなんてもんじゃない」「とても力強い映画で、観応えあり」と熱量たっぷりの感想がSNSに並んでいる。

 その『ローサは密告された』に映画評論家・柳下毅一郎とデザイナーで映画ライターでもある高橋ヨシキが唸った! この二人による熱量高いトークイベントが開催された。

 本作は、第69回カンヌ国際映画祭で、クリステン・スチュワート、シャーリーズ・セロン、イザベル・ユペールらを抑えて、ローサを演じるジャクリン・ホセにフィリピン初の主演女優賞をもたらした。監督は、45歳のデビュー作『マニラ・デイドリーム』で2005 年ロカルノ映画祭ビデオ・コンペ部門金豹賞を受賞し、「第3黄金期」と呼ばれるフィリピン映画界を牽引しているブリランテ・メンドーサ。世界三大映画祭のコンペ常連であり、カンヌ国際映画祭監督賞のほか、世界中で50を超える賞を獲得し、 タランティーノやショーン・ペンがその才能を絶賛するなど各国の映画人から高い評価を得ている。

 今回、登壇したのは「衝撃的な一本」「(メンドーサ監督の名を知らない日本人も)この傑作でそれも大きく変わるかもしれない」と評した映画評論家・柳下毅一郎と「スクリーンの背後に広がる世界の手触りに圧倒される」「(登場人物たちの)問答無用の実在感」と評したデザイナーであり、映画ライターの高橋ヨシキ。本作の映画的強度・衝撃をあますことなく語った。


ナチス政権を彷彿!? トランプ、安倍ちゃんより面白いんじゃ?

 本作の感想を聞かれ、熱量いっぱいに語り始めたふたり。

rosa柳下毅一郎 フィリピンのニュースは、いま一番気にしていて。先週、フィリピンが“大虐殺週間”だったそうで、80人ぐらい殺されてるんですよね、不謹慎な言葉ですけれど、流れてくるニュースがぶっ飛んでてスゴイ。そんなフィリピンの状況を追ってるので、映画を観た時、「やっぱり!」と思えた。

高橋ヨシキ ドキュメンタリーのように撮られていることから“フィリピンの現実”を突きつけられた。とにかくフィリピン、大変なことになってますからね。あと説明過多な映画が苦手なのだけれど、本作は不親切なぐらい語らないのも良かったですね。

rosa柳下毅一郎 ドゥテルテが去年、大統領に就任して、いまの世の中は安倍ちゃんやトランプ政権で「不景気が人を殺す」だとか比喩されるけど、ドゥテルテはホントに殺してるって時点で、フィリピンはやばい。「犯罪は一掃しました!」って、そりゃ殺してるんだもん、一掃できるよね(笑)。

高橋ヨシキ ナチス政権が「事件は減りました」って言ってたのと同じ状況だよね。あれ、ナチスの犯罪は数えてないから。


超一級の撮影・キャストの演技に唸った!

高橋ヨシキ 僕は三半規管が弱いんで「すっごくいい映画だな」と思いながらカメラワークに酔いました。警察の裏に入ってまた出てきて、土地や部屋が一連として繋がっている感じが臨場感があっていい。

柳下毅一郎 芝居もおそらく大きな段取りした決めてないと思うんですよね。麻薬がバレるシーンは、アドリブなのに、俳優たちの対応力でドラマが作られてることを感じた。役者の技量すごいですよ。

高橋ヨシキ 警察が踏み込んできたときに、ものすごくまごまごしてるんですよね、あれが普通のドラマじゃなかなか見れない演技で、もの凄くリアルでしたね。

rosa柳下毅一郎 ドキュメンタリー的で、出ている人も素人っぽくて、カメラを振り回すように撮られている。ピンボケもあるし、ほんとにドキュメンタリーを観ているかのよう。でもそれが全部“狙い”なのだから技術はめちゃくちゃ高度。

高橋ヨシキ 必要なものは絶対映っているからね。

柳下毅一郎 主演のおばちゃんもその場にいた人でしょ?っていうほどにリアルだよね。


実はバンドの KISS 好き!? ローサが着る T シャツの意味は……

高橋ヨシキ (バンドの)KISSのTシャツもいい味だしてるよね。旦那さんがポロシャツを着ているから余計に目立って。日本でも、何でそのTシャツきてるの!?っていう人いますよね。

柳下毅一郎 大阪のおばちゃんが猛禽類のTシャツきているのとおんなじだよね(笑)。

高橋ヨシキ とかいって、めちゃくちゃローサがKISSが好きだったらどうしよう、と思ったんだけど(笑)。これが別のバンドとかだったら別の意味とか考えちゃうけど、KISSの何もない感じがいいよね。

柳下毅一郎 確かにクイーンでだとダメだよね。この狙ってもできないような、異様なリアリティがいいと思った。


麻薬戦争は全世界的に敗北宣言! もはや麻薬は根絶やし不可能!

 衝撃的な現実が描かれる本作。「『カルテル・ランド』や『皆殺しのバラッド』とか麻薬映画が多いんですが、麻薬はどうしたら根絶やすことが出来るんでしょうね?」という話題に「それは“無理”という結論が出ました」と高橋から衝撃的な言葉が。

rosa高橋ヨシキ 世界で撲滅戦争を続けていましたが、ここ30年で一個も成果があがらず、協議会が公式の声明を出したんですよ。それに続く形で、アメリカなどが宣言して。全世界的に麻薬の“撲滅戦争”に敗北宣言をしてます。フィリピンは、ドゥテルテが全部殺したら解決するつもりかもしれないけれど、麻薬は撲滅できないことは世界的に認められました。麻薬によって引き起こされる犯罪より、麻薬が手に入らないことによって引き起こされる犯罪のほうがヒドイということになってしまったんです。

柳下毅一郎 つまりは禁酒法と同じ原理。アルカポネなどのマフィアが力をつけたように、組織が、より一層の力を増してしまうだけなんだよね。力を削ぐにはある程度合法化するしかない、という流れに向かっています。

高橋ヨシキ 日本で流通しているシャブは北朝鮮からきてるんじゃないですか? 万景峰号で……。

柳下毅一郎 万景峰号では来ないよ! 対馬のあたりで海に落としてやってんだよ……(笑)。日本人がシャブを広めたから、フィリピンでもシャブっていう名前で広まっているんだよね。迷惑かけて申し訳ないね。

 映画の作り方から、「麻薬は根絶やしできない!」という衝撃的事実が発覚し、ここでしか聞けない超貴重なトークショーとなった。


(オフィシャル素材提供)



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