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舞台挨拶・イベント

トップページ > 舞台挨拶・イベント > 『愛を積むひと』第40回ブリュッセル国際映画祭 最優秀女優賞受賞!

『愛を積むひと』 第40回ブリュッセル国際映画祭
最優秀女優賞受賞!

2015-12-05 更新

樋口可南子、小松貴子(プロデューサー)

愛を積むひとaitsumu
配給:アスミック・エース/松竹
© 2015「愛を積むひと」製作委員会

 今年で第40回目を迎えるブリュッセル国際映画祭(通称FIFB)が11月17日から21日まで開催された。日本映画として初の国際コンペティション部門に招待された朝原雄三監督の『愛を積むひと』(The Pearls of The Stone Man)から、女優の樋口可南子が「Prix de la meilleure actrice」(最優秀女優賞)を受賞した。同作はエドワード・ムーニー・Jr.氏の小説を映画化したもので舞台は「丘のまち」で知られる北海道の美瑛町。熟年夫婦の愛と寛容さをテーマにした感動作だ。

aitsumu ブリュッセルには「ファンタステイック国際映画祭」や「アニマ国際映画祭」などジャンルの違う映画祭が集まっている。「ブリュッセル国際映画祭」は、これまで続いたインディペンデント映画を拡大し、40周年記念として盛大に開催される予定だった。しかし直前にパリでテロ事件が発生し、オープニングと同時に厳戒態勢が敷かれた。19日の『愛を積むひと』の上映も心配されたが、日本映画を求めるファンが続々と来場し、開場前には長蛇の列ができた。

aitsumu そんな厳しい状況の中、日本からの小松貴子が出席し、上映前に英語で舞台挨拶をした。北海道の雄大な映像の中、主人公を含む登場人物全員のストーリーが、パズルを合わせるような形で展開する映画。佐藤浩市は不器用な性格の夫で、樋口可南子はそんな夫の孤立を心配し手紙によって支える。朝原雄三監督が描く「良子」は、小津安次郎監督映画の原 節子のような、控えめだが芯の強さのある日本女性だ。

 ヤジが多いと定評のあるベルギー人の観客だが、上映中は静かですすり泣きが多く聞こえた。エンドクレジットが流れると大きな拍手がわき、ハンカチを手にした中年女性が「C’est très beau」、とても美しい映画だと話した。出口付近で小松に記念撮影をねだる観客もいて確かな手応えを感じさせた。

aitsumu 21日の映画祭最終日は、ブリュッセルの警戒レベルが最高値の4に引き上げられ軍隊も市内に配備された。地下鉄が止まり市外からの通行が全てストップ。当初予定されていたクロージング・セレモニーが中止となり、極秘の夕食会で賞の結果発表と授与式が行われた。最優秀女優カテゴリは、アレッサンドラ・デ・ロッシやマチルド•ビゾンなど映画祭開幕前から注目されていた女優たちの激戦だったが、最終的に国際部門の審査員全員一致で樋口可南子が選ばれた。

 国際部門の審査員長で米俳優のホルト・マッキャラニーはインタビューで「樋口可南子さんの演技は美しく非常に深い感動を与えました。彼女には自然の暖かさ、知性、優しさがあり、笑顔はスクリーン全体をも明るくしました。また佐藤浩市さんも素晴らしく最優秀男優賞のトップ候補でした。妻の声で読まれる手紙が夫を救い、また観ていた私たちの心に何度も何度も触れました。長い女優歴で築いた樋口さんの才能は評価されるにふさわしく、ここで選出できたことを光栄に思います」と語った。

 本作の原作者である米カリフォルニア州の大学教授である作家のムーニー氏も「僕の原作が基になった日本映画『愛を積むひと』を観てくれてありがとう。壁、真珠、手紙など原作にもあるストーリー要素に気がついてくれましたか? 主人公『アン』である『良子』を演じてくれた樋口可南子さんがベルギーで最優秀女優賞に選ばれました。可南子さん、本当におめでとう」と祝福のメッセージを綴った。

 映画の劇中曲はあのチャーリー・チャップリンが作曲し、ナット・キング・コールが甘く歌う「スマイル」。「笑顔でいれば、人生はまだまだ素晴らしいって分かるから」と歌う声、カメラが上から捉える佐藤浩市の空を見上げた切ない映像、そして姿が見えなくても雰囲気で感じ取れる樋口可南子の存在など全てにバランスが取れた演出。そして「許す」ということが自分の未来への幸せに繋がるという、今の時代にふさわしいメッサージを届けてくれた朝原監督。この数日間、国家の緊急事態に遭遇し戦争介入への緊迫感を目の当たりにしたベルギー人。「人は生きなければ」という美しい光が大きく灯されたようなプレミアは、彼らの心を癒すのにふさわしく、最も美しい感動作品として「ブリュッセル国際映画祭」の歴史に残るだろう。


※ブリュッセル国際映画祭について

 ■「ブリュッセル国際映画祭」とは1976年に創設されたブリュッセル国際映画祭は今年で40回目を迎える。今までの39年間はインディペンデント映画を中心に上映する映画祭として有名だったが、今年からはチームもテーマも一新し、「ブリュッセル国際映画祭」として規模を拡大した。

 ■今まで本映画祭で日本映画が上映されたことはないので『愛を積むひと』はブリュッセル映画祭初、かつ今年唯一のコンペティション部門で選ばれた日本映画となる。

 ■朝原雄三監督作品でコンペティション部門に出品されたのは本作が初となり、受賞も初めてとなった。

 ■11月中旬のパリ同時多発テロの余波を受け、本映画祭会期中に開催地ブリュッセルでは最高警戒レベル4に引き上げられたが、コンペティション部門への上映並び授賞式には日本からプロデューサー1名が出席した。


(文:記者 Jenna Park/ジェナ•パーク)



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